ひねもす建築|出雲大社庁の舎(いづもたいしゃちょうのや)と雨漏り
住宅をリフォームするのと同じように、改修工事が必要なのは有名建築も同じ事。
今回は、出雲大社の境内、拝殿の西側に建てられていた鉄筋コンクリート造の建造物《出雲大社庁の舎(いづもたいしゃちょうのや)》のお話です。
1963年5月10日竣工の出雲大社庁の舎は、建築家・菊竹清訓さん(きくたけ きよのり1928-2011)が設計した建造物で、菊竹氏の代表作の1つです。
それ以前にあった木造建造物の庁舎は1953年5月、火災により拝殿等と共に焼失してしまった。その為、防火・耐震・耐食性に優れた鉄筋コンクリート構造が採用され、出雲大社境内に突如、鉄筋コンクリート造の建造物が現れたのです。
稲刈りの稲束を掛けて干す《稲掛》をモチーフにしたと言うその建造物は、両端のドッシリとした柱へ長さ40Mの大梁・2本を架け渡し、斜めに掛けられた方立には階段状にコンクリートのルーバーと特殊なガラスがはめ込まれている。古代的であり、またモダンなデザインです。
階段状のルーバーは《雨樋》の機能を持ち、一定の雨水を貯めながら順々に下の段へと水を運ぶ棚田を思わせる。また室内には柔らかな光を運んでいる。
素晴らしいデザインと、当時の最先端技術で施工された《出雲大社庁の舎》は『日本建築学会賞』等、数々の賞を受賞し、国内外で高く評価されました。
(写真:屋根部分にシートが掛けられている)
しかし竣工の1か月後以降、各所で雨漏りが発生し、50年以上継続的に行ってきた修理の累積費が建築費を上回ってしまった事。建設当初計画していた宝物展示は、雨漏りの為展示出来ず、やむなく新たな宝物館を建設した事。また劣化などにより安全性を確保できない事もあり。惜しまれつつも2016年『建て替え』の為、解体されました。
新しい庁舎には、重要な祭礼の際、神事の一部分を行う榊之間を設置し復活させ、2018年度末までには、竣工の予定です。ちなみに新しい庁舎は和風建造物になるそうです。
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